※1:別名Th1細胞と呼ばれます。細胞やウイルスなど「異物」に反応し、排除するように指示を出す働きがあります。
万田発酵株式会社(本社:広島県尾道市因島、代表取締役社長:松浦 良紀)は、国立大学法人 広島大学(所在地:広島県東広島市)の河本 正次教授(大学院統合生命科学研究科 生物工学ユニット)と行った共同研究において、ウイルスや細胞内寄生菌の感染防御に働く1型免疫が、植物性発酵物(FBP)※2を摂食することで活性化されることを示唆する研究結果を得ました。
※2:複数の植物性原材料を発酵・熟成させた万田発酵製の複合発酵物試料です。(以下、FBPとする)1.研究背景
従前より、植物性発酵物(FBP)を摂食することで風邪予防の体感が得られるというモニタリング結果を取得していたことから、免疫との関係で植物性発酵物(FBP)が作用するのではないかと考えた弊社研究開発チームが、広島大学大学院 統合生命科学研究科に協力を依頼。「植物性発酵物(FBP)の免疫活性化作用の検証」(研究①)と、「免疫活性化作用のメカニズムの解明」(研究②)を目的として、今回の研究実施に至りました。
1.研究の概要
【研究①】「植物性発酵物(FBP)の免疫活性化作用の検証」
研究方法:・マウスにFBP含有飼料を予め4週間自由摂食させた。
・モデル抗原(OVA※3)を2週間おきに2回腹腔内に接種し、8週目のOVA特異抗体(IgG1およびIgG2a抗体)を解析。
・1型免疫の活性化を示す指標分子IFN-γ、および1型免疫の活性化により抑えられる2型免疫※4の指標分子IL-13とIL-4 の産出を解析。
※3:卵由来のタンパク質。「異物」のモデルとして免疫の研究に用いられる。
※4:別名Th2型免疫と呼ばれます。
研究結果:
FBPの摂食による抗体応答は、1型免疫の活性化で見られる「IgG2a抗体上昇・IgG1抗体低下」の応答パターンを示した(図1)。また、FBPの摂食は1型免疫の活性化を示す指標分子IFN-γの産生に亢進傾向をもたらし、IL-13とIL-4の産生を抑制した(図2)。
⇒FBPの摂食によって、ウイルスなどの感染防御に重要な1型免疫が活性化されていることを示唆された。
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(**は有意な差があることを示す)
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(*はFBP摂食による上昇傾向を示す、**は有意な差があることを示す)
次に、FBPによる1型免疫活性化のメカニズムを解明する目的で研究②を実施した。
【研究②】「免疫活性作用のメカニズムの解明」
研究方法:・マウスのマクロファージ※5細胞株をモデルとし、FBPとともに24時間刺激培養させた。
・1型免疫の誘導に必須な指令分子IL-12 p70の産生を解析
※5:別名食細胞または抗原提示細胞ともよばれ、ウイルスなどの外来異物を食べて排除するとともに、ウイルスに対する免疫応答(抗体によるウイルス排除やウイルス感染細胞の排除)を指令する。
研究結果:
FBPの濃度に応じて、マウスマクロファージ細胞株からのIL-12 p70産生を促進した(図3)。
⇒FBPは、マクロファージなどの食細胞に感知され、IL-12p70の産生を誘導することによってウイルスなどの感染防御に働く1型免疫の活性化にしている可能性が示唆された。
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(***はFBP刺激なし (-)よりも有意にIL-12の産生を増大させたことを示す)
以上、2つの研究結果により、植物性発酵物(FBP)の摂食が、ウイルスなどの感染防御に働く1型免疫の活性化に有益である可能性が示唆されました。
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図4. 免疫賦活作用のメカニズム
【出典】 1.学会創立100周年記念日本農芸化学会中四国支部第70回講演会 2025年1月25日