万田発酵株式会社(本社:―広島県尾道市因島、―代表取締役社長:-松浦 良紀)は、国立大学法人東海国立大学機構
岐阜大学(所在地:岐阜県岐阜市)の竹森 洋教授(工学部 化学・生命工学科 生命科学コース)と行った共同研究の結果、
万田発酵製の植物性発酵物(FBP)とその抽出液に植物性発酵物由来のエクソソーム様構造体※図1が含有されていることを発見しました。
万田発酵製の植物性発酵物(FBP)は果物、穀類、藻類、野菜といった複数の植物性原材料を3年3ヵ月以上発酵熟成させてできた複合発酵物です。
※図1 植物性発酵物由来エクソソーム様構造体 電子顕微鏡写真
左:植物性発酵物(FBP)右:抽出液1.エクソソームとは ※図2
エクソソームは、細胞外小胞の一種で、細胞から分泌される30~100ナノメートルの構造体です。遺伝情報やたんぱく質、脂質から構成されており、動物のほか植物や微生物にも存在しています(動物由来の構造体はエクソソームと呼ばれ、植物由来の構造体はエクソソーム様構造体と呼ばれる)。細胞間のコミュニケーションに重要な役割を担い、生体機能の調節に関与して、様々な生理機能への効果が期待されることから、医学分野のみならず化粧品や食品の分野への応用など、近年盛んに研究が行われています。
図2.月刊バイオインダストリー誌 2022.12を改変
エクソソームは、様々な生理活性物質を含有する30~100ナノメートルの微細小胞で、エクソソームを受け取った細胞の機能を修飾することで注目されています。エクソソームの由来は微生物から哺乳類まで広い範囲の細胞であり、今回確認された植物性発酵物由来のエクソソーム様構造体は、原材料である植物自体あるいは発酵微生物に由来すると予想され、免疫調整、メラニン合成抑制、整腸作用が期待されるものといえます。(岐阜大学 竹森教授)
2.研究背景
かつては、細胞内のごみ箱と考えられていたエクソソームでしたが、細胞間における健康に関わる情報伝達(がん診断やドラッグデリバリー技術)に関わっていることが知られて以降、近年はその存在意義が見直され、直近10年で論文数※図3も増加。特に医療分野(医薬品やがん診断など)で研究が進んでいましたが、最近では化粧品や食品の分野でも研究されるようになっています。
また、もともと動物由来のエクソソーム研究が主流であった中、ショウガやかんきつ類といった植物由来素材でエクソソーム様構造体の存在が確認されて以降、植物由来のエクソソーム様構造体についても研究されるようになり、その機能などについても報告されています。
当社は、それまで、報告例の少なかった植物性発酵物に由来したエクソソームの研究に着目。当社事業のベースである複数の植物性原材料を長期発酵熟成させた複合発酵物(万田発酵製(FBP))を研究素材として、2022年に本研究に着手して研究を続けてきました。
図3.1970代~2020年代にかけて、エクソソームに関する論文数の推移
3.研究結果の概要
万田発酵製の植物性発酵物(FBP)およびその抽出液からエクソソーム様構造体を抽出・フィルター精製して、岐阜大学が所有するマーカーを用いてエクソソーム様構造体の標識を実施。
①抽出・フィルター精製物をゲルろ過HPLCにてエクソソーム様構造体と考えられる構造体が存在する可能性が示唆された。※図4
図4. ゲルろ過HPLC測定結果 左:万田発酵製の植物性発酵物(FBP)と右:抽出液
②電子顕微鏡での観察の結果、ゲルろ過HPLCにて考えられた構造体※図1がエクソソームの特徴的な構造(たんぱく質・脂質複合体)を有していたことからエクソソーム様構造体であることを確認。
以上の結果から、万田発酵製の植物性発酵物(FBP)およびその抽出液にはエクソソーム様構造体が存在することが明らかとなりました。 万田発酵製の植物性発酵物(FBP)およびその抽出液は、その製法において発酵・熟成に数年間を要しますが、長期にわたる発酵熟成期間を経ても、エクソソーム様構造体が壊れることなく安定して存在できることが今回の結果から示されたものと当社は考えています。
今回の研究結果に関して、岐阜大学 竹森先生は次のように考察されています。「短期発酵物(ヨーグルト)にエクソソーム(細胞外小胞:EVs)が存在することはこれまでにも報告があったが、長期発酵物(万田発酵製 植物性発酵物 (FBP))にもエクソソームが存在することを確認することができた点が重要。
短期発酵物に存在するエクソソームの特徴的な物質はある程度絞り込めるが、多くの乳酸菌等の産物ともいえる長期発酵物でもこれが当たったことは私的には想定外で、このことは、我々の腸内細菌叢に似ているのではないかと思う。これらのことから、エクソソーム(細胞外小胞:EVs)の概念をかえる可能性も期待できる」。
4.今後の展望/展開
今回実施した岐阜大学との共同研究により、万田発酵製の植物性発酵物(FBP)およびその抽出液に植物性発酵物由来のエクソソーム様構造体が存在することが明らかとなりました。
今後は、今回確認されたエクソソーム様構造体が発酵・熟成のどの過程にて生成されたものなのか、その由来を検証し、更に定量化技術を開発することで万田発酵製 植物性発酵物(FBP)中の含有量の検証を行っていく予定です。
当社は、まだまだ知見が少ない植物性発酵物中のエクソソーム様構造体の生理機能の研究分野で、その機能性、作用機序の解明を目指してまいります。
【出典】
1.藤原ら 食品中のエクソソームの精製・定量・品質管理法、第45回日本分子生物学会年会、2022年11月30日~12月2日
2.近間ら 植物発酵物(FBP)の水溶性分画摂取による血中GLP-1の上昇、第46回日本分子生物学会年会、2023年12月6日~12月8日