万田発酵

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「植物性発酵物(発酵組成物)」にて特許を取得!!
2024年12月03日

~植物性発酵物(発酵組成物)が腸内細菌を増加させ、特に桑を加えた場合、増加した腸内細菌による短鎖脂肪酸の産出を促進することが確認されました~

万田発酵株式会社(本社:-広島県尾道市因島、-代表取締役社長:-松浦 良紀)は、米国の合同チームと行った共同研究の結果、弊社が製造する「植物性発酵物(発酵組成物)」(以下「本植物性発酵物」)が腸内で短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸など)を増加させる腸内細菌の働きを促進することに関する技術に関しての特許を取得いたしました!(特許第7554499号)

1.短鎖脂肪酸

短鎖脂肪酸は、腸内細菌が大腸内で作り出す有機酸で、腸の健康維持に不可欠な役割を果たします。特に酪酸は、腸上皮細胞のエネルギー源となり、腸粘膜の新陳代謝や腸管バリア機能を強化し、炎症や感染から腸を保護します。また、酪酸やプロピオン酸は腸のぜん動運動を促進し、抗肥満、抗糖尿病、免疫機能の改善などの効果が報告されています。 しかし、短鎖脂肪酸は臭いや味、吸収性の問題から、食品として直接摂取するのが難しいため、腸内に存在する細菌を活用して体内で自然に短鎖脂肪酸を産出させることが有効です。 (※図2)

図2.短鎖脂肪酸ができるまでの過程



2.発明内容

本発明は、人間の腸内で短鎖脂肪酸を増産する腸内細菌、特にビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)やラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)菌の増殖を促進する植物性発酵物(発酵組成物)を開発しました。本植物性発酵物は、黒糖、果糖、リンゴ、パインアップル、玄米、大麦、ミカン、カボス、ゴボウ、ニンニク、豆類、海藻類など多様な植物性の素材を発酵・熟成させて得られたものです。


  • 本植物性発酵物の成果
    本植物性発酵物は、腸内に存在する特定の腸内細菌を増加させ、短鎖脂肪酸の産出量を増加させます。短鎖脂肪酸は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、イソ吉草酸などで、これらは腸粘膜の保護やバリア機能の強化、炎症抑制などに寄与します。特に酪酸は、腸上皮細胞の主要なエネルギー源であり、腸管の健康維持に不可欠です。

    本発明は、特定の短鎖脂肪酸(酢酸, 酪酸, イソ酪酸,プロピオン酸)の増加を目的とし、そのために腸内でこれらの短鎖脂肪酸を産出する腸内細菌を増殖させることを目指し、プレバイオティクス食品としての効果が期待されます。 本植物性発酵物は、前述の短鎖脂肪酸を増加させる腸内細菌、特にビフィドバクテリウム ・ロンガムの増殖を促進することが確認されています。特に、桑を加えた場合、ラクトバチルス・アシドフィルス菌がより多くの短鎖脂肪酸を産出することが確認されました。※図5

    • 実験内容と結果

      ヒトの腸内細菌を培養した実験では、黒糖を含む培地と本植物性発酵物を含む培地を比較し、短鎖脂肪酸の生成量の違いを検証しました。まず18時間の嫌気培養を行い、フェノールレッドを用いて腸内細菌の増殖度合いを確認したところ、2%の植物性発酵物を添加することで、顕著な腸内細菌の増殖促進活性が確認されました。※図3


      図3. 左:嫌気培養後の様子

      右:培養後の培地をOD562 nmで測定した結果 (数値が低い=より増殖している)


      腸内細菌の同定には16S rRNA遺伝子解析を使用し、ビフィドバクテリウム・ロンガムが主要な菌として増殖することが確認されました。また、ラクトバチルス・アシドフィルス菌も短鎖脂肪酸の生成に寄与しました。

      短鎖脂肪酸の具体的な増加量を測定したところ、本植物性発酵物を摂取した群では、酢酸, 酪酸, イソ酪酸, イソ吉草酸, プロピオン酸のいずれの短鎖脂肪酸も黒糖のみのコントロール群に比べて顕著に増加していました。※図4


      図4.生成された各短鎖脂肪酸の濃度


      • 他の原材料の影響

        本植物性発酵物(1)に加えて、他原材料と組み合わせた発酵物についても検証しました。その結果、特に桑を加えた本植物性発酵物(2)がラクトバチルス・アシドフィルス菌を増殖させ、更に短鎖脂肪酸の産出をより促進することが確認されました。※図5


        図5. コントロールと比較した短鎖脂肪酸の産出量

        BR:黒糖(コントロール)、(1):本植物性発酵物、(2):本植物性発酵物+桑



        • 結論
          本植物性発酵物は、腸内で有用な短鎖脂肪酸を増加させるための有効なプレバイオティクス食品であり、特に桑を加えた本植物性発酵物は、短鎖脂肪酸の産出を促進することで腸内細菌のバランスを最適化し、腸粘膜の健康を維持し、免疫機能の向上や生活習慣病の予防にも寄与する可能性があります。

          3.今後の展開/活用展望

          今後は引き続き腸内細菌をはじめとする微生物と本植物性発酵物(発酵組成物)との関係性について研究を進めるとともに、ヒトだけでなく植物やその栽培土壌、畜産動物や魚類などの水産物を含めた幅広い生物種に対する発酵組成物の生理作用について解明を目指してまいります。